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木を植えた男

 

実際に森を作っている現代版「木を植えた男」
A man actually growing a forest:

●10月15日 フランス・マノスク
<October 15> Manosque FRANCE

環境文学の鬼才、Jean Giono(ジャン・ジオノ)は南フランスのProvence(プロバンス)地方Manosque(マノスク)に生まれました。

彼は1970年、Manoqueで75才でこの世を去りましたが、その生涯で30冊以上の小説、エッセイ、映画のシナリオを残し、代表作となった「L'homme qui plantait des orbres(木を植えた男)」はすくなくとも世界12カ国で翻訳出版されています。その「L'homme qui plantait des orbres」の冒頭にこんな言葉が記されています。

        人びとのことを広く深く思いやる、すぐれた人格者の行いは、
        長い年月をかけて見定めて、はじめてそれと知られるもの、
        名誉も報酬ももとめない、まことに奥ゆかしいその行いは、
        いつか必ず、見るもたしかなあかしを、地上にしるし、
        のちの世の人びとにあまねく恵みをほどこすもの。

物語は、Provence地方の荒れ果てた大地を牧草を求めて遊牧する、孤独な羊飼いの話です。男は、荒れ地に「ドングリ」の実を植え続け、来る日も、来る日も男はドングリの実を植える。やがて、荒れ地は緑の森となり生命を育み、小川は人びとに豊かな収穫をもたらしました。羊飼いは、その不屈の精神と寛大さ、たゆまない情熱を胸に安らかにその生涯を閉じたのです。

“羊飼い”は、Provenceの自然を愛した作家Jean Gionoの創造した人物ですが、同じ地に実存の「木を植えた男」と言える人物がいます。「彼」を訪ねました。


木を植えた男
木を植えた男
自分で森を造る。現代版「木を植えた男」ManosqueのBoniniさん。 松や檜を中心に3カ所に分けて4,500本。若木のうちは動物に食べられたり、風でおれたり……。

Manosqueから北西へ約数10km、小さな農村Revest-du-Bion(レベスト・デュ・ビオン)。この村からさらにクルマで約10分の所にEmilien Bonini(エミリアン・ボニーニ)さん、85歳が住んでいました。Emilienさんこそ、木を植え続けている現代版「木を植えた男」だったのです。

なにがBoniniさんに木を植える決心をさせたのか? 興味本位の失礼な質問にも淡々と答えてくれるところは、まさに物語の主人公さながら。その答えというのは「私は先の大戦でドイツ軍の捕虜になりました。毎日森で働かされたことで、森が好きになり、生きて帰れたならいつしか自分で森を造ろうと思ったのです」

さすがに現在では勝手に他人の山に木を植えるわけには行きません。そこで彼は仕事をリタイア後、さっそく101ヘクタールの土地を買い、木を植え始めたというわけです。ただ物語と違うのは、長年連れ添った、良き理解者の奥様がいるということ、また、村に出れば暖かい隣人達にいつで会えるということでしょう。

すでにBoniniさんは4,500本の木を植え、今も次々と木を植えています。最初に植えた木はすでに独り立ちし、あとは年月が立派な大木へと育てて行ってくれるでしょう。もしかするとBoniniさんは自分の造った“森”を見ることが出来ないかもしれません。

でも、まるで「そんなことは関係ないね」という表情で今日も可愛い木々たちを黙々と見回るBoniniさんの姿に、「なぜ植えるのですか?」などという質問をしてしまったことを恥じる思いでした。


木を植えた男
木を植えた男
現代の「木を植えた男」は孤独ではありませんでした。奥さんのSezanneさんと。 プロバンス地方のおなじみの風景、「鷲の巣村」をバックに。

More than thirty books of various types like essay and film scenario were written by a talented environmental literary man of blessed, Jean Giono. His most famous work The Man Who Planted Trees have been translated into at least 12 languages.

Giono used to love natural beauty of Manosque and created a shepherd for the book, while there lives a man now who is said to have planted as many as 4,500 young plants just like the shepherd did in the book. So why do not we meet him in his forest?


10月15日<October 15>

現代版「木を植える男」ボニーニさんを訪ねました。

日本の多くの子供達にも読み親しまれている“環境文学”「L'homme qui plantait des orbres(木を植えた男)」。フランス東南部のProvence(プロバンス)地方を愛した作家、Jean Giono(ジャン・ジオノ)の名作ですが、この物語の主人公さながらに、木を植えている現代版「木を植えた男」がManosque(マノスク)にいると聞きました。

その人とは、永年勤めたケミカル会社をリタイアして、物語さながらDurance(デュランス)川とDrome(ドローム)川、そしてVentoux(バントー)山脈に囲まれたRevest-du-Bion(レベスト・ド・ビオン)というところに、101ヘクタールの土地と建物を買って「悠々自適な生活」を送るEmilien Bonini(ボニーニ)さん、85歳でした。

物語とちょっと違うところは、奥様のSezanne(セザンヌ)さんと二人で仲むつまじく暮らしているということ。そして、今ではクルマでちょっと街へ出かければ、暖かい近隣の方々がいるというところでしょうか。

また、週末になればアーティストの娘さんも遊びに来るといった、ごく普通の老後生活といえないこともないのです。

いったい、どんなきっかけでBoniniさんは物語さながら「木を植える」ことを始めたのでしょうか!?

15 October, 2000

Meeting with Mr. Bonini, present version of "The Man Who Planted Trees".:

There is a best selling environmental literary book "L'homme qui plantait des orbres (The Man Who Planted Trees)" written by a French man Jean Giono who loved Provence region of South-East France. This book has been read by and well known to many people including Japanese children.

The man we met today in Manosque is a revival version of The Man! Ex long-time chemical company worker purchased a land of 101 hectares with a house after retirement in a place called Revest-du-Bion which is, as the case of The Man, surrounded by Durance river, Drome river and Ventoux mountains.

Mr. Emilien Bonini of 85-year-old leads a life of ease and contentment.


今日の隊長のひとこと
<Today's Yokota's comment.>

『ずっと話したかった、念願のBoniniさんにお会いできました。20年後、30年後、彼自身や私は見られないかもしれませんが、彼の植えた木は立派な森となっていることでしょう。』

 


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