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先端技術の具現化

 

先端技術の具現化

いよいよNASAにやってきました。
いわずとしれた宇宙開発の総本山、アポロで月に人を送ったり、火星の石を持って帰ったり、すべてここんちが頑張っているおかげです。


自己完結型“ミニ地球”<NASAジョンソン・スペース・センター>(6月18日)

このNASAでは実に興味深い試みが行われています。ついにNASAにやってきました
かつて“バイオ・スフェア”と呼ばれる実験がアリゾナかどこかで行われていましたが、いよいよNASAも本気で自己完結型の“ミニ地球”を造ろうと頑張っているのです。

“バイオ・スフェア”計画は不慮の事故でとん挫してしまったようですが、NASAとは全くつながりのない団体が行っていたもの。
で、NASAとしてはもちろん初めての取り組みなのです。

名称からもそれは理解できるでしょう。
「NASA Advanced Life Support Program」つまり、どこか宇宙の外に“コロニー”を造ろうなどという壮大な物語ではなく、基本となるのは月や火星に(!)実際に人を送るのに、宇宙船の環境の中で自己完結的に資源をリサイクルしながら宇宙の旅を続けることができるように、システムを開発しようというものなのです。


宇宙でのリサイクルの説明を聞いていますECO-MISSIONスタッフはNASDAの柳川さんや鈴木さんとともに、NASAの広報部長さんに実際に施設を案内していただきました。

まずは水に空気。これのリサイクル無くしてリサイクルを語るな、でしょう。
いままでの宇宙船は地球から持っていった酸素なり水を“消費する”スタイルで、一部はリサイクルされていましたが、基本的にはいかに消費量を押さえるかがポイントだったのは、映画「アポロ13号」でもおわかりのとおり。

で、月ですらあの状態ですから、現在のロケットの能力からすれば行き帰りで150日はかかる火星探査の場合は、“消費型”からできるだけ“自己完結型”に切り替えなければ、人間を運ぶのに大型トラックに毎日の水や食料を満載して走らせるようなもので、現実的ではありません。


そこでNASAではこれまでに蓄積した技術や新たなテクノロジーを駆使して、ほぼ実用化のレベルで“自己完結”型のシステムを開発、研究に入っているのです。

すでに男女4名によるチャンバー(宇宙船のような外界から隔離された空間)でのテストを繰り返しており、我々ECO-MISSIONのスタッフも実物のチャンバーに入れてもらいました。ここで、火星探査に必要な150日以上に及ぶ宇宙飛行時の“自己完結”サイクルの完成をめざすのです。

また、一方では食料も何とか“自己調達”できないかと、宇宙船内での耕作を目指す研究も紹介してもらいました。なんと、発光ダイオードを太陽の光の代わりにして(5分の一くらいの効率が望めるそうです)サニーレタスを栽培していました。「ここで使っているLEDは日本製だよ!」

そして最後に、これらの各部門の研究をまとめて具体的なシステムにする“バイオ・プログラム”の責任者テリー・トリーさんに、実際に造っている5つのチャンバーからなるシステム本体を紹介してもらいました。
とはいっても、巨大なドラム缶のような空き缶(直径50フィートもある)が4つあるだけ。
あとひとつ入る予定で、この5つのドラム缶で、居住区、ライフサポート、植物の栽培、ライフ・サイエンスなどの研究をまず地上でシミュレーションするというものでした。

「NASA Advanced Life Support Program」で人類が火星に足跡を残すのは、あと何年後!?

Bio Plex内部

 


若田宇宙飛行士に聞く(6月19日)

本日はNASAの取材2日目。
超ビッグなNEWSです!
あの日本人宇宙飛行士、若田光一さんがEC0-MISSIONのスタッフたちに会いに来てくれたのです!!

若田さんは今、STS-92と呼ばれる飛行計画の準備で超多忙なのです。
その若田さんの時間をやりくりしてくれたNASDA(宇宙開発事業団)ヒューストン・オフィスの柳川さん、そして文字どおり走り回ってくれた!鈴木さん、どうもありがとうございました。

さて、日本ではクルマを持っていないという若田さんですが、プリウスという初の市販ハイブリッド車で我々が来たということに、とても興味を持ってくれたそうです。日本人宇宙飛行士、若田光一さん

「環境問題にもいろいろあると思います。我々ができることとしては宇宙から地球の環境をモニターする、というようなことが考えられるでしょう。また限られた地球の資源を大切にするために、宇宙でエネルギーを開発することもできます。たとえば宇宙空間に太陽電池を配置して発電し、そのエネルギーを地上に伝送する、こんなことも可能なのです。」(若田さん)

ひとつひとつの質問にていねいに答える我らがヒーロー、日本人宇宙飛行士若田さんは、実に聡明で明るい方でした。ちなみにこちらで普段乗っているクルマは、フォードのバンだそうです。

「160人からの宇宙飛行士がここで働いておりますけど、クルマ選びのポイントに環境というパラメーターを入れている人は、まだほとんどいないでしょう。家族の人数やペイロード、燃費くらいですか。これからプリウスで勉強したいと思います。」(若田さん)

最後に同行した記者団の方からこんな質問が出た。「今度宇宙に行くときのパフォーマンスはもう考えてあるのですか?」(記者)
「前回はコーヒーで習字をしたりしたのですが…」(若田さん)
折り鶴の話が出て「宇宙で折り鶴を飛ばしてみて下さいよ!」(記者)
「それはとてもいいですね!ぜひやってみたいと思います!」(若田さん)

若田さんの次のフライトは来年(その前に毛利さんが、この9月に飛ぶ予定)。
宇宙に折り鶴を飛ばしている姿を期待しよう。

若田さん、そしてNASA、NASDAの皆様、いろいろお世話になり大変ありがとうございました。
明日は、いよいよテキサスを離れ、一路ニューオルリンズへ!

ロケットをバックに取材を受けるプリウス

 


NASA ジョンソン・スペースセンター(NASA JSC = NASA Johnson Space Center )

テキサス州南部にあるJSCは、石油産業やハイテク産業が盛んなヒューストンの中心部から車で約30分のところに位置する、NASAの中枢施設の一つです。

JSCの主な役割は、発射後のスペースシャトルなどの宇宙船の集中管理地上基地と、宇宙飛行士の訓練施設。スペースシャトルは、通常フロリダ州大西洋沿岸(自動車のレースで有名なデイトナ・ビーチのすぐそば)にあるNASA ケネディー・スペースセンター(NASA KSC = Kennedy Space Center)から打ち上げられますが、離陸後の地上との交信やすべてのチェックは、ここJSCで行われています。最近のヒット作である映画「アポロ13号」や、宇宙関連の地上基地の映像は、ほとんどがJSCの管制センターをモデルにしているのです。

また、一般公開のビジターセンターがあり、宇宙開発の歴史から宇宙ステーションに至るまで、盛り沢山の展示が行われており、連日多数の観光客で賑わっています。

もう一つの大きな役割である宇宙飛行士の訓練施設はJSC敷地内の各所にあり、日夜、宇宙飛行士が過酷な訓練を行っています。日本の宇宙飛行士である毛利さんや向井さんなども、ここで基本的な訓練を行ったことで有名でしょう。宇宙飛行士と呼ばれる人は、全世界で数百人でしかいませんが、アメリカや日本、ヨーロッパなど、スペースシャトル搭乗員は約1年間に渡って、ここで訓練を受けるのです。

NASAのシステムでは、一つの宇宙旅行計画に対して、必ず二組のクルーを同時に訓練しています。たとえば発射当日になって急に具合が悪い人が出ても、すぐに人員を交換できるようなシステムになっているのです。従って宇宙飛行士でいながら、一生宇宙に行けなかった人もたくさんいます。

JSCでは他にも多くの研究開発を行っていますが、注目すべき点は国際協力として準備中の国際宇宙ステーション(International Space Station)関連でしょう。宇宙空間で暮らすためには、地球上と生命維持環境が著しく異なっている問題を解決することが必須で、NASAを初めとし国内の宇宙研究機関(NASDA、ISASなど)や、ロシア、ESA(ヨーロッパ宇宙開発機構)などで、長年に渡ってさまざまな研究が行われてきました。

スペースシャトルや宇宙ステーションなど、宇宙空間で人間が生活するには多くの制約があり、限られた空気や食料、生活空間などを維持しなければならないのです。つまり、閉鎖された空間において、いろいろなものを再生・循環しながら生活をしなければならないわけです。

これは閉鎖生態系生命維持環境システムと呼ばれ、生命科学における大きなテーマとなっています。長期間宇宙に滞在する場合、機内で発生した人間からの排出物や環境を、どう再利用するかの研究です。これに関してはALSS (Advanced Life Support System = 高度生命維持支援システム) において、数多くの研究や実験が繰り返されてきましたが、その一貫としてミニ地球を作り、外界と閉ざされた環境で生活するには何が必要か?を実践的に調べる研究システムが、Bio-Plex (Bioregeneratve Planetary Life Support Systems Test Complex Project) なのです。

 


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